オレは幼稚園の時、既に九九が言えました。






字も書けたし、絵も他の子より上手に書けました。







小さい頃から車が大好きで、大人たちはよくオレを近くの国道に連れて行ったものです。













走り過ぎていく車の車種を全て言えました。













近所の人はこう呼んだものです。




















神童と。















でも、その頃から変なところがありました。









高校の時、押入れから当時書いたと思しき日記を見つけました。










夏のある日、仙台の七夕パレードを見に行った日の日記。













きょうははーれーをみました。















かっちょよかったです。




















その頃からオレは素敵な言い回しを知っていたようです。





別の日。














くもりがらすをてでふいて

















あなたあしたがみえますか。





















なぜか、大川栄作の名曲「さざんかの宿」を書き写してます!








幼稚園児に「あなたあしたがみえますか?」と聞かれても返答に困ります。














きっと成長が人一倍早かったんでしょう。





そして、今でも鮮明に覚えてる思い出。













オレはその思い出を「本屋事件」と呼んでいます。













一人で近所の本屋に行ったある日。












いつものコーナー(「よいこ」とか「めばえ」とかあるコーナー)にも飽き飽きしていたオレは奥のほうへ行ってみることにしました。











その未開の地に足を踏み入れた「しゃかりきコロンブス」













ものすごいものを見つけます。
















成人誌コーナー。




















「金が出たぞぉぉー!!」








「よいこ」のコーナーよりも奥に進んだことのなかったオレは一人バーチャルゴールドラッシュ
















「わるいこ」のコーナーがあったとは・・・。











冒険で得たものがあまりにもすばらしかった。




人がなんと言おうとその時のオレはこの世で一番すばらしいことを達成した気分でした。




世界で初めて大西洋単独飛行を成し遂げたチャールズ・リンドバーグにも負けはしません。













「股間よ、あれがエロの火だ。」













で、このチンコバーグ。







勢い勇んで成人誌コーナーに突入。












すげー!すげー!










その数の多さにひとまず圧倒されます。










今までは「おかあさんといっしょ」を楽しんで見ていましたが、今日からはそれもできなくなります。








だって、気づいちゃったんですもの。















「おねえさんといっしょ」の方が数百倍素敵だということに!














ネズミの「ポロリ」より、













おねえさんの「ポロリ」のほうがよほどニコニコ島だということに!















でも、自分は幼稚園児。






コレは幼稚園児が見てはいけないものだというのは直感的に理解できます。






かといって、ここで引き下がっては男が廃る。










そう、そんじょそこらの幼稚園児と一緒にして欲しくない。








オレはなんと言ったって





















九九が言えるのだから。














そうそう。


オレは外見を歳相応に合わせているだけであって、中身はもう見る資格がある大人なんだ。













このキン肉マンのスニーカーだってブラフさ。













と自分をいかに奮い立たせてもなかなか見る勇気が出ません。







でも、見たい。







客はオレ一人。






あとは店番のババアが一人いるだけ。











このババアさえどうにかできれば・・・。









そこで、作戦を練りました。














名づけて、「子どものしたことですから作戦」















幼稚園児としてこの立場を逆利用しない手はないと思いつきました。



ほら、よくいるじゃないですか。



店の中で走り回る子ども。












それを自分で演じることにしました。













最初は関係のないコーナーを走り回ります。







無論、無邪気な笑顔を振りまくのは忘れません。










結構疲れはしますが、全然苦になりません。














全てはエロ本を見るためですから。













最初は子どもコーナーを数周旋回し、次は店全体。










最後に目的地に爆撃です。










とはいえ、立ち止まることは許されません。







なにせ、遊んでいる子どもを演じているのですから。













一周するたびにエロ本を一ページずつめくっていきます。















当時のオレは一歩のようなインファイターでは戦えないことを知っていたのです。

ippo











目指すは宮田君のようなアウトボクサー。

miyata











目の覚めるような















エロ本ヒットアンドアウェイ!













エロ本コーナーに走っていって一瞬でその内容をくまなく見る







そして、ページをめくり風のように走り去る








コーナーを一周してきてさっきめくったページを一瞬で記憶







そして、またページをめくる












この繰り返しです。
















ページをめくる度に年頃の女性の淫らな姿が現れます。








我ながら完璧な作戦だと思っていましたが、所詮は幼稚園児。
















遊んでいる割にはスピードが速すぎることをババアに気づかれます。















「ちょっとボク、こっち来なさい。」














視界の外から飛んでくるカウンターパンチをモロに食らった瞬間です。









「今、エッチな本読んでたでしょ?」











あまりにパンチがきれいに入ったため、ヒザに来ています。








ガクガクブルブル・・・
















「ああいう本は大人になってから読みなさい!」













一周ごとにめくっていったエロ本はそのままに一目散に本屋から駆け出しました。














あぁ、どうしよう・・・







きっと警察に通報されるんだ・・・










ハレンチ幼稚園児として出頭しなくちゃいけないんだ・・・











明日の朝刊に載っちゃうんだ・・・








「本屋で暴走

 エロエロちびっこローリング族



















早くも「人生の終わり」を感じました。









今思えば笑える話なんですがね、一つだけ笑えないことがあるんですよ。
























その時から成長してんのか??





押してから風のように走り去れ!